ダライ・ラマ法王はメッセージの中で次のように述べられた。
「私はすでに政治的責任のある立場ではありませんが、ひとりのチベット人として同胞チベット人の幸福を願わずにいられません。チベット問題は、単純にチベット人の政治的権利の問題ではなく、ひいては人類全体に影響する問題です。その理由を挙げると、まず、チベット高原は気候変動に影響することが確認されており、またチベットを源流とする主要な河川はアジア地域全土10億人以上の水源であることから、チベットの環境はその地域にとっては非常に重大な問題です。二つ目には、チベット仏教の文化は平和、非暴力、慈悲を尊重するもので、世界的に価値があり、保護すべきものだということです。

チベットは現在、困難な状況下にあります。チベット文化は今なお脅威にさらされています。中国当局は僅かでも抗議や反発の気配を察知すれば容赦なく弾圧します。しかし弾圧が強まるほど、チベット人の抵抗する精神力は強くなるようです。中国政府がチベット人の強い要望に向き合い、公正な交渉をもって問題解決に臨むことが、唯一の長期解決になります。私たちチベット側は、選挙で選ばれた指導部が、分離独立を求めるのではなく、チベット人のための真の自治を求める中道主義を実践すると繰り返してきました。

最近では中国共産党は農村人口と貧困層に注目し始めました。これは一部には司法制度の機能を国際水準に引き上げる必要があるからです。習近平国家主席を知る人からは、同主席はこれまでより自由で現実的だと聞いています。事実、汚職対策に果敢に取り組まれているようです。鄧小平氏の経済改革で中国を経済大国に導いたように、習近平氏にも政治改革に臨まれることを希望します。

もし中国が進路を前向きに転換すれば、指導部に透明性を期待でき、結果として中国は信頼と尊敬を得ることになります。そうした発展が実現すれば中国は国際社会から尊重され、また同時にチベット問題のような諸問題を解決でき、皆が恩恵を享受できます。私は欧州議会のような組織に、中国がそのような道を歩むようご支援いただけるよう望みます。」

本会議のスピーカーとして、在ヨーロッパ　ダライ・ラマ法王特使ケルサン・ギャルツェン氏、チベットのための国際キャンペーン（ＩＣＴ）マッテオ・メッカチ会長、亡命チベット代表者議会トゥプテン・ワンチェン議員、チベットを支持する委員会（Comite de Apoyo al Tibet）アラン・カントス理事、スペイン初のチベット裁判の弁護士を務めたホセ・エリアス・エステべ氏も出席した。

このインターグループ会議ではスピーカーがそれぞれチベット関連の幅広い問題やチベットの現状について語った。カントス氏とエステべ氏は特にスペインにおけるチベット裁判とその背景、訴訟までの自らの活動内容について、また、訴訟の取り下げを求める政治的圧力を受けたこと、そうした圧力がスペインの、ひいてはＥＵ全体の民主主義の価値を貶めるおそれがあることも語った。スペイン国会は元中国政府幹部に対する訴訟を取り消すため憲法改正に着手しているが、カントス氏らはこれに反対する活動を行うようスペインの各政党に訴えた。